魚津で観察される蜃気楼は、大きく分けて二つの顔を持つ。春先から初夏にかけて現れる「上位蜃気楼」と、晩秋から冬に頻発する「下位蜃気楼」だ。多くの人々を魅了し、ニュースを賑わせるのは前者の上位蜃気楼である。これは冷たい海面上に暖かい空気の層が乗ることで光が下向きに曲がり、実際の風景が上方に伸びたり反転して見える現象を指す。
一方で、冬場によく見られる下位蜃気楼は、温かい海面の上に冷たい空気が流れ込むことで発生する。道路のアスファルトに見える「逃げ水」と同じ原理で、島や船が宙に浮いて見える「浮島現象」として親しまれている。どちらも同じ気象光学現象でありながら、大気の温度勾配の違いによってまったく逆の歪みを生み出す。魚津の海は、この二つの現象を高精度で観察できる世界有数の天然実験室なのだ。