日本におけるこの色彩の歩みも極めて独特だ。飛鳥・奈良時代の壁画から近代の日本画に至るまで、アズライト(藍銅鉱)を原料とする「群青」は、表現者たちにとって常に特別な意味を持つ色であり続けた。葛飾北斎や歌川広重の浮世絵に見られる「ベロ藍」のブーム以前から、日本の美意識の根底にはこの引き締まった深青への憧憬が流れている。
現代のポップカルチャーにおいてもその影響は根強い。若者の葛藤や創作への情熱を描いた人気楽曲『群青』の世界的ヒットや、数々のTVアニメ作品で象徴的に使われるグラフィックは、若年層にとってこの色を「青春の苦悩と解放」を意味するシンボルへと再定義した。伝統工芸の重厚さと、サブカルチャーのエモーショナルな感性が地続きで繋がっている点こそ、日本市場における最大の強みと言えるだろう。