厨房の奥で轟々と音を立てて煮立つ巨大な羽釜。ここで仕込まれるスープは、単に豚骨を強い火力で炊き上げただけの代物ではない。九州の伝統技法である「呼び戻し」を軸にしながら、その日の気温や湿度、骨の状態に合わせて店主が微細な調整を重ねている。
古いスープのコクと新しいスープのフレッシュな旨味が融合する瞬間、豚骨特有の嫌な臭みは綺麗に消え去り、代わりに骨の髄から抽出された圧倒的な旨味の塊だけが残る。口に含んだ瞬間に広がるのは、とろりとした重厚感がありながら、後味が驚くほど軽やかな極上の液体だ。「濃厚でありながら重くない」という相反する要素の高次元での結実。一口すするごとに、スープが持つ奥深いストーリーが口いっぱいに広がっていく。