日本のアニメ文化がもたらす影響力は、画面の中だけに留まりません。作中に登場する実在の風景や街並みをファンが訪れる聖地巡礼による経済効果は、人口減少と過疎化に悩む地方自治体にとって、極めて強力な起死回生の一手となっています。
岐阜県飛騨市、埼玉県久喜市(鷲宮)、静岡県沼津市など、作品の舞台となった地域では、聖地巡礼を目的に年間数十万人規模の国内外のファンが足を運びます。現地を訪れたファンは、単に写真を撮影するだけでなく、地域の商店街で消費を行い、住民との温かい交流を育みます。「作品の世界観を追体験したい」という純粋なファンの情熱は、画一的な観光プロモーションでは決して生み出せない持続的なリピーターを生み出し、数十億円から数百億円規模の経済波及効果を生み出し続けています。
その一方で、国家プロジェクトとして推進されてきたクールジャパン戦略の現在には、手厳しい批判や反省の弁も少なくありません。行政主導の官製ファンドによる投資の失敗や、現場のクリエイター感覚と乖離したトップダウン型のプロモーションは、業界関係者やファンの間で「看板倒れ」と揶揄される場面もありました。
報道各社の取材や業界白書が指摘するように、真に成功している事例の多くは、行政が主導した箱モノ行政ではなく、作品へのリスペクトを持った民間企業や地域住民がファンの自発性を尊重し、ボトムアップで共創したコミュニティです。官民が手を取り合うべきは派手なイベントの開催ではなく、後述する制作現場のインフラ支援や、権利処理のグローバル円滑化といった土台作りであるという現実が、浮き彫りになっています。