本木雅弘の俳優としての成熟は、NHK大河ドラマへの出演歴と見事に軌を一にしています。彼が出演した大河ドラマは、いずれも単なる時代劇の枠を超えた名作として語り継がれています。
1991年の『太平記』では、後醍醐天皇の寵臣・千種忠顕を好演。貴族でありながら武芸に秀で、派手な甲冑に身を包んだ華麗かつ儚い武将を演じ、アイドル時代の面影を残しながらも本格派への第一歩を強く印象づけました。
そして1998年、大河ドラマ単独主演を果たした『徳川慶喜』では、幕末の動乱期に幕府の幕引き役を担った第15代将軍・徳川慶喜の孤高と知性を熱演。感情をあえて抑制した静謐な芝居により、「何を考えているのか測り知れない最後の将軍」という難役に命を吹き込みました。この慶喜役で培われた「静の迫力」は、後の『麒麟がくる』で見せた「動の狂気」と見事な対をなし、本木雅弘という俳優の多面的な演技力を証明する礎となりました。