ネット上の旅行記やSNSで時折見かけるのが、「円谷プロ本社に行けばミュージアムやグッズショップがある」という誤解だ。結論から言えば、世田谷区砧7丁目にあった円谷プロダクション旧本社はすでに取り壊され、現在は閑静な住宅街・分譲マンション等になっている。かつて怪獣スーツが保管され、脚本家や監督たちが日夜議論を交わした伝説の木造プレハブ社屋は、現存していない。
旧本社があった敷地周辺には、当時の活動を偲ぶ記念碑や公式な展示施設が常設されているわけではない。訪問者が大声で談笑したり、私有地へ立ち入ってカメラを向けたりする行為は、近隣住民の静穏な生活環境を脅かす重大なマナー違反となる。円谷プロはその後、八幡山などを経て現在は渋谷区へオフィスを移転しており、砧の地は「かつて巨星たちが情熱を注いだ原点の地」として静かに敬意を払う対象と心得るべきである。
一方で、近隣の東宝スタジオ(東宝撮影所)メインゲート前には、巨大なゴジラ像や壁画が鎮座し、映画美術の系譜を今に伝えている。制作の「現場感」を肌で感じたい散策者は、跡地の住宅街を無理に探訪するのではなく、東宝スタジオ外周の緑道を散歩しながら、かつて円谷英二監督が砧撮影所で生み出したミニチュア撮影の熱気に思いを馳せるルートを選択するのが賢明だ。