ビジネス文書の作成において、文法以上にプロの校閲者が目を光らせるのが「漢字とひらがなの使い分け」です。変換キーを押すと真っ先に出てくる「頂いております」を無意識に選んでいるなら、今すぐ見直しが必要です。
公用文作成のルールや新聞・出版各社の表記基準(用字用語の手引き)では、本動詞と補助動詞によって厳格な区別が定められています。
- 本動詞(漢字表記:頂く):物理的に具体的な「物」をもらう場合、または「食べる・飲む」の謙譲表現。「お土産を頂く」「お料理を頂く」
- 補助動詞(ひらがな表記:いただく):動詞の連用形+「て」の後に続き、相手に〜してもらう恩恵のニュアンスを表す場合。「お送りいただく」「ご配慮いただく」「お時間をいただいております」
ビジネスメールで頻出する「お時間をいただいております」「ご連絡いただいております」といった用法は、すべて相手の行為に依存する補助動詞です。したがって、公用文の観点からもテキストの可読性の観点からも、平仮名で「いただいております」と表記するのが正統なビジネス作法となります。漢字の「頂」は頭頂部やつま先を想起させる実質名詞のニュアンスが強いため、画面上が漢字だらけになり視覚的な威圧感を与えてしまうデメリットも見逃せません。