ヘンリー広瀬のプロデュースワークを語る上で欠かせないのが、アン・ルイスとのタッグだ。二人が作り出した「歌謡ロック」というジャンルは、単なる歌謡曲の派生ではなく、当時の日本のユースカルチャーそのものを牽引する大ブームへと発展した。
1984年にリリースされた「六本木心中」はその最たる例と言える。沢田研二が作曲し、伊藤銀次が編曲を担当したこの楽曲において、プロデューサーとしての彼はスタジオの緊張感をそのまま音盤へと封じ込めた。さらに翌年の「あゝ無情」では、より重厚なグラマラス・ロックの要素をミックス。アン・ルイスのパワフルでハスキーなボーカルを最大限に生かす音響設計は、まさに彼らだからこそ到達できた境地だった。
二人の関係性はプライベートなパートナーシップにとどまらず、クリエイティブにおける最強の同志としての絆に基づいていた。妥協を許さないスタジオ作業のなかで、一音一音に魂を吹き込んでいく制作スタイルは、今や伝説として語り継がれている。