虚圏(ウェコムンド)を統べる王となった破面篇、そして拘束衣を着せられながらも圧倒的な存在感を放った千年血戦篇において、藍染の言葉は更なる深みを獲得していきます。
鏡花水月の解号と破道九十「黒棺」の完全詠唱
藍染の斬魄刀「鏡花水月」の解号は「砕けろ、鏡花水月」。五感すべてを支配する完全催眠能力は、相手の認知そのものを書き換える藍染の思想をそのまま具現化したものでした。
また、コミックス48巻・第418話で黒崎一心・浦原喜助・四楓院夜一らを前に披露した破道之九十「黒棺」の完全詠唱は、圧巻の呪文構成として知られています。
「滲み出す混濁の紋章 狂気に満ちたる気侭な器 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ――破道の九十・黒棺」
詠唱破棄でも隊長格を一撃で葬る威力を誇りながら、あえて完全詠唱を行うことで自らの進化と絶対的な力の差を誇示する演出は、読者を圧倒しました。
市丸ギンとの歪んだ関係性に見る「孤独」の証明
藍染の側近として行動を共にしながら、松本乱菊のために百年間藍染の命を狙い続けていた市丸ギン。藍染はその殺意を最初から見抜いていました。
「自分を本気で殺そうとする者」をあえて身近に置くことで、自らの進化の触媒にしようとした藍染の振る舞いは、「自分と対等に渡り合える他者が存在しない」という根源的な孤独の裏返しでもありました。ギンの命懸けの奇襲すら超越した藍染は、哀しみを帯びた眼差しでギンの最期を見届けます。
最終回で語られた「最後に放った名言」と藍染惣右介の現在
ユーハバッハを退けた後、再び地下牢獄「無間(むけん)」へと収監され、2万年の刑に服することとなった藍染。物語の最終幕(コミックス74巻・第686話)で彼が読者に投げかけたモノローグこそ、本作屈指の名言です。
ユーハバッハが望んだ「生と死の境界がない、死の恐怖のない世界」に対し、藍染はこう語りかけました。
「人はただ生きるだけでも歩みを続けるが それは恐怖を退けて歩み続けることとはまるで違う」「だから人はその歩みに特別な名前をつけるのだ 『勇気』と」
神になろうとした男が、最後に人間の「死の恐怖に抗って進む尊厳(=勇気)」を肯定したこの幕引きは、藍染惣右介というキャラクターの旅路を象徴する最高の結びとなりました。