羌瘣の生存確認とともに最も読者が気をもんでいるのが、信を蘇生させた禁術の具体的な代償と寿命の行方です。該当のシーンは、単行本第58巻第629話「信の夢」から第59巻第632話「再始動」にかけて詳細に描かれました。
羌瘣が使った術は、蚩尤族の禁術とされる「幽連道・魄領の術(はくりょうのじゅつ)」です。天地の間にある深淵を渡り、死線を超えた対象の魂を現世へ引き戻す秘術ですが、発動条件として「術者の命の半分、あるいはすべてを差し出す」という苛烈な掟が存在しました。術の最中、羌瘣の魂は肉体を離れて冥府の狭間へと落ち込み、肉体側の心拍も停止寸前の状態にまで追い込まれます。
絶体絶命の窮地を救ったのが、精神世界に現れた亡き姉・羌象の魂でした。羌象は掟の抜け道を突く形で羌瘣を押し戻し、命を丸ごと奪われる最悪の事態を食い止めます。その際、象姉は羌瘣へ「寿命は大きく減ってしまったけれど、全部持っていかれることは防げた」「信の魂を半分繋ぎ止めたことで、ふたつ良いことがある」という予言めいた言葉を遺しました。
現世に蘇生を果たした羌瘣ですが、代償がゼロだったわけではありません。目に見える寿命の短縮に加え、術以降は体内の「気」の流れが不安定になり、かつてのような限界を超えた深い「巫舞(みぶ)」を長時間維持することが極めて困難になりました。この肉体的リミットが、その後の戦局における新たな緊張感を生み出しています。