手紙の文面は、決してドラマチックな愛の告白や重大な秘密ではなかった。そこにあったのは、1970年代後半のバンクーバーに留学していた青年が、日本の父親に向けて送った近況報告だ。「こちらはすっかり秋です。メープルの葉が赤く染まり、風が冷たくなってきました。大学の講義は厳しいけれど、なんとかやっています」――そんな、どこにでもある日常の切り取り。しかし、キーボードのタイピングではなく、万年筆のインクで丁寧に書かれた文字からは、当時の息づかいがそのまま伝わってくる。
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