京都の和菓子といえば、四条や祇園の瀟洒な上生菓子を思い浮かべる人が多いかもしれない。だが、京都人が「自分たちの生活そのもの」として真っ先に胸に浮かべるのは、日常に寄り添う「朝生(あさなま)菓子」だ。
日持ちはしない。今日作って、今日食べる。その潔さこそが真骨頂だ。鳴海餅の歴史は御所南西の堀川下立売で創業した本店に端を発するが、山科の地に根を下ろした暖簾は、完全にこの盆地独自の生活圏と胃袋を支えるインフラとして育まれてきた。2026年の今、極限まで進んだ過度な観光地化に息苦しさを覚えた京都人が「暮らしの原風景」を取り戻す場所として、山科界隈の飾らない食文化に熱い視線を注いでいる。