この事件をモチーフにしたコミックのなかで、とりわけ広く知られているのが2000年代半ばに発表された『17歳。』(原作:藤井誠二、漫画:鎌田洋次)だ。実在の事件をストレートに再現するドキュメンタリーではなく、主犯格の威圧に屈して見張りを命じられた「傍観者の少年」の視点から描かれたこの作品は、読者に強烈な自己投影を迫る。
自分なら助けを呼べただろうか。恐怖で竦み、同じように見て見ぬふりをしたのではないか――。作画の力によって描き出された息苦しい同調圧力は、凄惨な暴力描写の奥にある「人間の弱さと卑怯さ」を冷酷に浮き彫りにした。だが、フィクションとして再構成されたとはいえ、現実に命を奪われた被害者が存在する以上、脚色の是非をめぐる議論は完結することがない。創作が現実の痛みを侵食していないかという葛藤は、描き手と読み手の双方に今も重くのしかかっている。