しかし、地図の向こう側には常に血を流している人間がいる。アパートのオーナーや近隣住民たちだ。一度サイト上に炎が灯れば、その不動産の資産価値は数千万円単位で吹き飛ぶ。それが事実であればまだ諦めもつくかもしれないが、問題は「誤認」と「悪意」の投稿が後を絶たない点にある。
近所で起きた事件の住所を勘違いしたユーザーが、無関係の隣のアパートにピンを刺す。退去時の敷金精算で揉めた元住人が、嫌がらせで「飛び降り自殺あり」と虚偽の書き込みを行う。一度登録されたピンを削除させるためのハードルは極めて高い。運営者側を相手取った削除請求や損害賠償訴訟は全国の裁判所で繰り返されているが、削除されるまでの数ヶ月、あるいは数年の間に物件は入居者を失い、オーナーはローン返済に追い詰められていく。「公共性」を盾にするプラットフォームと、生活の糧を奪われる個人。この法廷闘争に決定的な終止符はまだ打たれていない。