かつて水産業界を揺るがした外国産アサリやシジミの産地偽装問題。そのトラウマを払拭するため、宍道湖では徹底したトレーサビリティの構築が進められてきた。流通する個体の元素同位体比分析やDNA検査を抜き打ちで実施し、「宍道湖産」のブランド価値を法的に防衛する体制が固まった。
流通改革は価格設定にも及ぶ。これまで続いてきたスーパーの特売用としての「安売り」からの脱却だ。適正な利益が漁業者に還元されなければ、資源管理のコストも次世代の育成も賄えない。
消費者に求められているのは、単に「安くて手軽な食材」を求める姿勢の見直しだ。1パック数百円の裏側にある、湖の生態系を守り抜くコスト。それを正当な対価として支払う合意が、消費者と産地の間でようやく結ばれつつある。