皮肉なことに、パーム油の消費量が世界中で爆発的に伸びた背景には、「トランス脂肪酸の排除」という健康志向の動きがありました。
かつてマーガリンやショートニングには、液体の植物油に水素を添加して固形化させた「部分水素添加油脂」が使われていました。しかし、この製造過程で心臓病リスクを著しく高めるトランス脂肪酸が生成されることが国際的に問題視され、各国で厳しい規制が敷かれました。
そこで食品業界がトランス脂肪酸を含まない代替油脂として白羽の矢を立てたのが、天然の状態で固まりやすいパーム油でした。その結果、「トランス脂肪酸フリー」をうたう製品の多くが、代わりに飽和脂肪酸をたっぷり含んだパーム油に置き換わるという構造が生まれました。トランス脂肪酸を回避できたとしても、飽和脂肪酸を過剰に摂取してしまっては血管への負担という根本的な課題は解決されません。