情報伝達の主軸が印刷物からデジタルデバイスへと移り変わる現代において、タイポグラフィの役割も変容を迫られている。可変フォント(バリアブルフォント)の登場や、スクリーンサイズの多様化は、文字デザインに新たな課題を突きつけている。
しかし高木真理子は、表層のテクノロジーが変化しようとも、人間が文字を読み、意味を理解するプロセスの根幹は不変であると説く。画面上での読みやすさ(レジビリティ)と識別性(アイデンティティ)の両立には、伝統的なタイポグラフィの知識が不可欠であるからだ。
特に、多言語化が進むデジタルプラットフォームにおいて、文化的な文脈を無視した機械的な文字配置は、コミュニケーションの不全を引き起こす危険性がある。彼女が提唱してきた異文化理解に基づくデザイン思考は、デジタル時代においてこそ真価を発揮している。