この物語が単なる医療ドラマにとどまらず、豊かな人間賛歌となった最大の功績は、脇を固めた名優たちにある。漁師の原剛利を演じた時任三郎は、無口ながらも背中で語る父親像を完璧に具現化。実際の漁船に乗り込み、本物の漁師と見紛うばかりの風格で画面を引き締めた。
診療所の事務長・和田一範を演じた筧利夫の熱演も見逃せない。ムードメーカーでありながら、コトーへの絶対的な信頼を寄せる和田の涙は、視聴者の感情を何度も揺さぶった。現場でも筧のエネルギーはキャスト・スタッフを鼓舞し続けたという。
さらに、自治会長・安藤重雄役の泉谷しげるによるアドリブ混じりの怒号と温もり、スナックの店主・西山茉莉子を演じた大塚寧々の包容力。彼らが織りなす「生きた集落の空気」があったからこそ、架空の島である志木那島は実在するかのような説得力を持ち得たのである。