ネット上で流布している牛首に関する情報の中には、安全管理上見過ごせない誤解がいくつか存在します。
第一の誤解は、「唐松岳まで登れたのだから、牛首もそのまま歩ける」という安易な連想です。八方尾根から唐松岳頂上山荘までのトレイルは、一部の木道や砂礫地を除けば危険度の低い整備された登山道です。しかし、頂上山荘から先へ一歩進んだ瞬間、登山の性質は「ハイキング」から「手足を使ったクライミング的要素を含む岩稜歩行」へと劇的に変貌します。アプローチの平易さに惑わされ、自身のスキルセットが切り替わっていないまま難所に突入してしまう登山者が後を絶ちません。
第二の誤解は、「鎖は常にピンと張って全体重を預けるもの」という認識です。牛首に張られた鎖は、アンカーボルトで岩に固定されていますが、積雪期の雪圧や落石の衝撃によって支点が傷んでいる可能性がゼロではありません。全体重を預けた瞬間に支点が破断、あるいは鎖が急激にたわんで体勢を崩すリスクが常に伴います。「鎖は指を添えてバランスを保つためのもの、体重の9割は自らの足底に乗せる」というのが岩場通過の絶対原則です。