露地でアスパラガスを育て始めた人が「2年目、3年目になっても太い芽が全然生えてこない」と挫折する背景には、植物生理を無視した「収穫の焦り」と「地下環境の軽視」という2大トラップが潜んでいます。サカタのタネなどの大手種苗元が公開する技術指導書でも繰り返し警鐘が鳴らされていますが、アスパラガスは一般的な一年生野菜とは全く異なるメカニズムで生きています。
私たちが普段口にしているアスパラガスは、地中に広がる「貯蔵根」に蓄えられたデンプン(炭水化物)を消費して勢いよく伸び出た新芽です。地上部で光合成を行い、その栄養を地下の太い根にストックし、翌春にそのエネルギーを一気に放出して太い芽を萌芽させます。ところが、初心者の多くが陥るアスパラガス露地栽培の失敗理由の筆頭は、植え付けから間もない時期に顔を出した細い芽を「せっかく出たから」と刈り取ってしまう「早獲り」です。地下に十分な養分が蓄積されていない段階で芽を摘んでしまうと、株は光合成を行う術を奪われ、エネルギー切れを起こしてそのまま衰弱・枯死に至ります。
もう一つの決定的な要因が、土壌の過湿による根腐れです。キジカクシ科クサスギカズラ属に分類されるアスパラガスは、原産地が地中海東部から乾燥した砂地・沿岸地帯に由来するため、根を地中1メートル以上も深く伸ばす性質を持っています。粘土質で水はけが悪い露地に浅く植えてしまうと、梅雨時期の長雨で土中の酸素が欠乏し、根腐れを誘発します。目に見える地上部ばかりに気を取られ、地下の貯蔵根が呼吸できる環境を整えていない畑では、何年待っても立派な芽が萌芽することはありません。