江戸後期から明治初期にかけて絶頂期を極めた北前船ですが、明治中期以降、驚くほどの速さで歴史の表舞台から姿を消しました。衰退した理由は主に3つの近代化要因に集約されます。
第1に、蒸気船の台頭と近代海運の成立です。風任せで航行する木造の弁才船に対し、天候に左右されず定時運航が可能な大型鉄鋼製蒸気船が登場したことで、輸送効率と安全性で圧倒的な差がつきました。
第2に、鉄道網(国鉄)の全国的な延伸です。日本海側にも鉄道が敷設されたことで、陸上貨物輸送のスピードと確実性が飛躍的に向上し、危険を冒して海路を進む必要性が激減しました。
第3に、電信(電話・電報)の普及による「価格差ビジネスの消滅」です。通信技術の発達により、全国の米相場や物価情報がリアルタイムで共有されるようになったため、「寄港地ごとに安く買って高く売る」という買積船の最大の強みが構造的に失われてしまいました。さらに、明治末期には主力の積荷であった北海道のニシン漁自体が乱獲によって不漁に陥ったことも致命打となりました。