「なぜ周りの空気を読まずにゆっくり歩くのか」という疑問の裏には、本人が無意識のうちに抱えている認知や心理的特性が存在します。歩行速度は本人の「内的時間感覚」と深く結びついており、決して他者を妨害しようという悪意から生じているわけではありません。
歩くのが遅い人の心理的特徴として際立つのが、「過剰なマルチタスク状態」または「内省への過度な没頭」です。周囲の景色、頭の中に浮かんだ今日のタスク、あるいはスマートフォンの画面に意識を奪われていると、歩行という身体運動に割り当てられる脳のリソースが激減し、自動的にスピードが落ちてしまいます。
また、個人の成育歴や生活習慣も無視できません。急かされることなく穏やかに過ごせる家庭環境で育った人や、歩道が広大で人口密度の低い地方で育った人は、物理的なパーソナルスペースを広く確保できる環境が当たり前となっています。そのため、都市特有の「周囲の気配を察知して自らの速度を微調整する同調圧力」に慣れておらず、結果としてマイペースな歩行リズムが身体に染み付いているケースが目立ちます。