名古屋競馬をAIで攻略しようとするデータサイエンティストが最も頭を抱えるのが、移転後の弥富コースが持つ独自の物理的・環境的パラメータです。旧土古競馬場の極端な小回りと比較してコース形態は大幅に近代化されたものの、依然として一般的な競馬場の常識が通用しないトラップが潜んでいます。
第一に挙げられる名古屋競馬場が荒れる理由は、最後の直線が240mに設定されている点です。西日本エリアの地方競馬場としては比較的直線が長く確保されたことで、後方からの差し・追い込みが決まりやすくなったと錯覚されがちですが、実態は違います。3〜4コーナーにかけてのスパイラルカーブと絶妙なバンク角により、先頭集団が外に振られにくく、内ラチ沿いを通る先行馬が圧倒的に有利なレイアウトになっています。この名古屋競馬場コース特徴と傾向を画一的なダート距離データだけで学習させた汎用AIは、過小評価されたインコースの先行逃げ切り馬を取りこぼし、高配当の波乱を見逃す傾向にあります。
第二に、伊勢湾からの強烈な季節風と、路盤管理によるクッション砂の水分含有量の急激な変化です。とりわけ冬季や季節の変わり目には、突風が馬群のペース配分を狂わせ、先行争いを過激化させます。「血統・展開・馬体」を多角的に解析する高精度AIであっても、現場のリアルタイムな風向きや砂の入れ替え時期といった物理的ノイズを完全にリアルタイム補正することは困難であり、これが思わぬ大穴激走を生み出す引き金となっています。