大手通信社や全国紙で長年文字校閲に携わってきたベテランデスクらに実態を取材すると、入社1〜3年目の若手記者やWEBライターの原稿において最も頻出する赤字修正のひとつが「穴を空ける」であると口を揃えます。
「紙面で『風穴を空ける』『ピアス穴を空ける』という表記が残ったまま印刷に回ることは絶対にあり得ません。社内表記マニュアルでも一発で差し戻される対象です。しかし、WEBメディアの普及に伴い、事前の校閲フェーズを通過しないまま『穴を空ける』と誤記された記事がそのまま公開され、検索上位に上がってしまう。読者がそれを正しい日本語だと刷り込まれてしまう負の循環が起きています」と、校閲関係者は危機感を示します。
また、知恵袋やSNSなどのコミュニティを分析すると、一般ユーザーの間で深刻な混乱が生じている現場が観察できます。
「会社の上司に『企画書のファイル用穴を空けておいて』と指示されたが、日報に『穴空け完了』と書いたら『漢字が違う、開けだ』と怒られた。理不尽に感じるがどちらが正しいのか」(20代・新入社員の知恵袋相談より)
このように、指示する側も受ける側も曖昧なまま業務を進め、思わぬ摩擦を生むケースが散見されます。さらに建築・設備業界の現場エンジニアからは、「図面で『穴開け』と書く職人もいれば『孔明き』『穿孔』と書く設計士もいる。図面記号としてはJIS規格(日本産業規格)で統一されているが、打ち合わせ議事録の段階で表記が割れると、貫通穴なのかただの座繰り(掘り込み)穴なのかで誤認トラブルを招きかねない」という切実な声も聞かれます。