巨額の資金を投じながらも、利益を生み出せずに沈む企業と、投資をテコに営業利益率を押し上げる企業。その明暗を分ける最大の戦場が、DXと人的資本へのアプローチです。
失敗に終わる企業の多くは、クラウドツールの導入やペーパーレス化といった「手段のデジタル化」で満足し、ビジネスモデルそのものの改変に踏み込めないケースです。これに対し、DX投資成功事例として知られる先進企業は、現場の泥臭いオペレーションデータを収益エンジンへと転換させています。
たとえば、建設機械大手のコマツは、建機の稼働データを管理する従来プラットフォームからさらに踏み込み、施工現場全体の工程管理や自動運転建機を統合したソリューションビジネスを展開。ハードウェアの売り切りからリカーリング(継続課金)型モデルへの転換を完遂しました。また、日立製作所が展開する「Lumada」事業に見られるように、社会インフラの保守運用データを集約・分析し、顧客企業の省エネや設備保全の最適化を請け負うデータドリブン経営は、高い営業利益率を叩き出す好例です。共通しているのは、自社の強みである現場データと顧客のペインポイントを直結させ、新たな収益モデルを創出した点にあります。
さらに、人的資本投資の具体例でも本質的な差がついています。単に従業員へオンライン学習サービスの受講を義務付けるような「形だけのリスキリング」は、現場の負担感を増大させるだけに終わります。成果を上げている企業では、獲得したスキルと社内公募制度、そして給与テーブルが完全に連動しています。高度AI人材やデジタルアーキテクトに対して年収1500万〜2000万円超を提示できる複線型人事制度を敷き、同時に既存社員に対しても、データサイエンスや脱炭素マネジメントの習得度合いに応じた明確な昇給パスを整備しています。
同時に、自前主義の限界を悟った企業によるスタートアップ出資とCVCの活用、さらには事業再編とM&A戦略も加速しています。成長領域の技術を短期間で取り込むため、自社ファンドを通じたシード・アーリー期のスタートアップへの資本投下を活発化させる一方、採算性の低いノンコア事業はプライベート・エクイティ(PE)ファンドなどへ迅速にカーブアウト(事業売却)し、得た資金を成長事業へ再配分するポートフォリオの代謝が機能し始めています。