「最初に飲むと濃密な塩気のあるクリームが口いっぱいに広がり、そのあとに力強い珈琲の苦味が追いかけてくる。この落差がクセになるんです」
渋谷の路地裏に2026年初頭にオープンした専門店で、バリスタが手際よくフィン(ベトナム伝統の金属フィルター)から滴る黒い液体をガラス杯に注ぐ。いま、日本の若者たちを虜にしているのは、かつてフレンチローストの深煎りとして一括りにされていたベトナム珈琲の「進化形」だ。
特に中部フエ発祥の「Cà phê muối(塩コーヒー)」は、SNSでのバズを皮切りに一気に定番化した。さらに、ハノイの伝統である卵黄と練乳を泡立てたカスタード状の「エッグコーヒー」も、スイーツとドリンクの境界線を溶かす新感覚の体験として定着。大手飲料メーカーも2026年春、市販缶飲料としてこのカテゴリーに参入を決め、空前のブームはいよいよマス層へと波及している。