資材のスペックを100%引き出し、耐用年数いっぱいに稼働させるためには、展張時の施工技術が決定的な差を生みます。
第一の鉄則は「無風の早朝」に作業を行うことです。
風速が毎秒2メートルを超えるだけでも、大判のフィルムは巨大な帆船の帆のように風を孕み、パイプの変形やフィルムの裂け、さらには作業者の転落事故を招きます。気温が上がりきらない早朝はフィルムの伸び縮みも安定しており、適正なテンションをかけやすい時間帯です。
第二の秘訣は「パイプ接触部への保護処理」です。
フィルム劣化の主因の一つは、直射日光で熱せられた亜鉛メッキパイプの高温熱劣化と、風による摩擦です。骨組みとフィルムが直接擦れ合う棟パイプや肩パイプの部分に、あらかじめ専用の保護テープや余ったPOの帯を挟み込んでおくだけで、摩擦による局所破断を数年にわたって防ぐことができます。
現在のおすすめ銘柄としては、光を拡散させてハウス全体の影を減らす散乱光タイプ(三菱ケミカルアグリドリームの「美サンライト」シリーズやタキロンシーアイの「バツグン5」など)が市場で高い評価を獲得しています。直射日光による葉焼けを防ぎつつ、ハウス奥まで均一に光を届ける技術は、近年の猛暑下において収量維持の決め手となっています。
【プロの結論】農ビを選ぶべき人 vs POフィルムを選ぶべき人の判断基準
資材選びに唯一無二の正解はなく、経営方針と栽培体系に応じた冷徹な選別が不可欠です。
【農ビを選ぶべきケース】
- 借地や遊休地を利用した1〜2シーズン限りの短期作型である
- 厳冬期に無加温または最小限の暖房で越冬させる作型(イチゴの早出しなど)で、初期のフィルム密着性と重厚な保温力を最優先したい
- 資材購入の初期予算枠が限られており、次年度の売上で設備投資を回収する資金計画を組んでいる
【POフィルムを選ぶべきケース】
- 3年以上の定置栽培を行い、毎年の張り替え作業にかかる人件費や労働負担を根底から排除したい
- 大規模ハウスで1棟あたりの面積が広く、資材の重量軽減(作業性向上)が欠かせない
- 夏場の高温障害を避けるため、サイドの巻き上げ換気を毎日頻繁に行う(ベタつかないPOの滑落性が不可欠)