日焼け止めをはじめとする日本のコスメ製品は、医薬品医療機器等法(旧薬事法)第61条の規定に基づき、「適切な保存条件下で3年を超えて性状及び品質が安定なもの」については使用期限の記載義務が免除されています。つまり、パッケージに使用期限が明記されていない製品は、未開封の状態に限り、製造から3年間は安全に使用できるという法的・科学的な前提があります。
しかし、このルールは「空気に一切触れていない工場出荷状態」に限った話です。一度でもキャップを開けた瞬間から、容器の内部には室内の酸素、大気中の湿気、そしてチューブの吐出口に触れた手指の常在菌が侵入します。国内の化粧品受託製造(OEM)大手の研究開発担当者は、業界向けセミナーの場で次のように警鐘を鳴らしています。
「日焼け止めは水と油、そして微細な紫外線散乱剤や吸収剤を高度な乳化技術で均一に混ぜ合わせたデリケートな製剤です。直射日光が当たる部屋や湿度の高い洗面所で1年間放置された製品は、防腐剤の効力を超えて雑菌が増殖したり、油分が過酸化脂質へと変質しているケースが後を絶ちません」
したがって、「未開封で冷暗所に保管されていた去年の製品」は使用可能ですが、「去年一度でも使ってワンシーズン放置した製品」はすでに使用期限を大きく超過していると認識するのが皮膚科学における鉄則です。