日本の豊かな生態系と水資源を支える根幹でありながら、時に甚大な水害をもたらすのが「梅雨」と「台風」です。これらもまた、地球規模の大気循環と海流が連動した精密なメカニズムによって発生しています。
初夏(5月下旬〜7月)になると、北の冷たく湿った「オホーツク海気団」と、南の暖かく湿った「小笠原気団(太平洋高気圧)」が日本付近で真っ向から押し合います。この性質の全く異なる2つの気団の境目にできる停滞前線が「梅雨前線」です。前線付近には南西諸島方面から暖湿気流(湿った空気の流れ)が絶え間なく流れ込み、長期間にわたる雨を降らせます。近年では、上空の偏西風の蛇行や海水温上昇が加わり、積乱雲が次々と同一の場所で発生・通過する「線状降水帯」が形成されやすくなっており、短時間での記録的豪雨が多発しています。
一方の台風は、フィリピン沖など海水温が約26.5℃以上の熱帯の海上で発生する熱帯低気圧が発達したものです。海面から立ち上る膨大な水蒸気が凝結して雲になるときに放出する潜熱(熱エネルギー)をエサにして巨大化します。この台風が太平洋高気圧の縁を回り、偏西風に乗って日本列島を直撃します。
これらの要素が複合的に重なる結果、日本の全国平均年間降水量は約1,700ミリメートルに達します。これは世界陸地の平均年間降水量(約800〜900ミリメートル)の約2倍という驚異的な数値です。特に紀伊半島の南東斜面や屋久島などでは年間降水量が4,000ミリメートルを超える地域もあり、年間降水量の地域差の激しさは日本地理の際立った特徴となっています。