精神科への入院が決まった際、患者が最も身構えるのが「閉鎖病棟」という響きです。内科や外科の病棟と異なり、出入口が常時施錠され、インターホンや看護師の専用キーがなければ出入りできない構造になっています。しかし、この施錠管理は患者を罰するためのものではなく、重篤な抑うつ状態に伴う希死念慮(死にたいという衝動)による突発的な行動や、判断力が著しく低下した状態での徘徊・事故を防ぐための厳重なセーフティネットです。 実際に閉鎖病棟で2ヶ月間を過ごした元IT企業勤務の30代男性は、自著や手記のなかで次のように語っています。 「病棟に入った瞬間は刑務所にでも入れられたような絶望感がありました。しかし、外界からの電話もチャット通知も一切届かない静寂のなかに身を置いたとき、張り詰めていた神経が数年ぶりに緩み、涙が止まらなくなったのを覚えています」 病棟での一日には、崩れてしまった体内時計と自律神経を整えるための厳格なルーティンが組み込まれています。
【閉鎖病棟における一般的な一日のスケジュール例】
・07:00 起床・血圧測定・検温
・07:30 朝食・服薬確認(看護師の目の前で確実に服用)
・09:00 主治医の回診・問診
・10:00 作業療法(塗り絵、陶芸、軽運動、音楽鑑賞など自由参加)
・12:00 昼食・服薬
・13:00 自由時間・院内散歩(許可が出ている患者のみ)や休息
・15:00 入浴(男女別の完全時間交代制)
・18:00 夕食・服薬
・20:00 デイルームでの談話・就寝前薬の配布
・21:00 消灯・完全就寝
病室はプライバシーが保たれる個室と、他者との適度な関わりが生まれる総室(4人部屋など)があります。初期の重症期は観察が行き届きやすいナースステーション近くの部屋に配置され、症状の回復とともに病棟内の自由度が段階的に広がっていく仕組みです。