大手ハウスメーカーでマイホームを新築した関東在住の施主(30代男性)の手記には、当時の生々しい葛藤が記録されています。
「土地の契約後に上がってきた地盤調査書で『深層混合処理が必要』と告げられ、追加費用165万円を突きつけられました。予算オーバーで頭を抱え、工法を削れないか建築士に詰め寄りましたが、『不同沈下で家が傾くリスクを考えれば削るべきではない』と説得されました。工事当日に大型重機が狭い前面道路を入ってきたときの近隣への気まずさや、巨大なドリルが地面を穿つ音は忘れられません。ただ、近隣で起きた地震の際も建物に狂いが一切出なかった事実を知り、今では必要な投資だったと納得しています」
一方、都内の地盤改良会社で15年以上のキャリアを持つ現場監督は、業界内部の実情を次のように明かします。
「スラリー撹拌で一番恐ろしいのは、土質が途中で変わっているのに設計通りの固化材量だけで盲目的に打ってしまうことです。特に地下水脈が通っている敷地では、注入したスラリーが地下水で薄まり、設定した強度が出ない『固化不良』が起こり得ます。私たちは掘削時の重機のうなり音や油圧計の針の動き、排出される土の粘度を手のひらで触って確認する感覚を決して怠りません。カタログ通りの数字だけでなく、現場の土をどれだけ見極められるかがすべてです」