医学的・社会的な支援の現場において、最も誤解が生じやすいのが「軽度知的障害」「境界知能」「発達障害」の区別です。それぞれの違いを客観的な指標で整理した以下の比較データを確認すると、その差異は明白になります。
統計学上、知能指数(IQ)は正規分布を描くため、平均値の100を中心として、全体の約14%が「境界知能」に位置し、約2%が「軽度知的障害」を含む知的障害に該当します。 特筆すべきは、児童精神科医の宮口幸治氏によるベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』でも広く知られるようになった「境界知能」の存在です。境界知能の方々は外見や会話だけでは全く違和感がありません。しかし、学校教育の高度化や社会の複雑化に伴い、実生活で極めて大きな困難に直面します。公的な手帳の対象外となるケースが多いため、制度のセーフティネットからこぼれ落ちやすい深刻な社会問題となっています。 これに対して、芸能界で告白が相次いでいる発達障害は、知能指数の高低とは無関係に発症する神経発達の多様性(ニューロダイバーシティ)です。高い言語能力や論理的思考力を持ちながら、忘れ物が多い、空気を読むのが苦手といった「脳の凸凹」を抱える状態であり、知能自体の低下を意味する知的障害とは医学的に明確に区別されています。