奈良県北西部に位置する平群町(へぐりちょう)。かつて日本の雪駄生産の8割以上を支えたこの土地の血統が、大和工房の根底には流れている。下請けとして歴史の影に隠れていた産地の矜持を、現代のマーケットへと直接繋ぐ架け橋となったのが、観光と生活が交差する「ならまち」という舞台だ。
白壁と虫籠窓(むしこまど)が残るこの街並みは、ただ歩くだけで時間感覚を鈍らせる。その空気感の中で手にとるからこそ、現代雪駄の持つ「用の美」が際立つ。観光地の単なるお土産ショップとは決定的に異なる。産地の工場と買い手の生活を直結させる、生きたギャラリーとしての機能がここにはある。
織物、鹿革、合成皮革、耐水性に優れた特殊素材。壁一面に掛けられた多彩な鼻緒は、平群の職人たちが時代に合わせて素材を更新し続けてきた証左にほかならない。