ウィンズロウの著作は多岐にわたり、どの作品から手に取るべきか迷う読者も少なくありません。結論から言えば、最高傑作として国内外で圧倒的支持を集めているのは『犬の力(The Power of the Dog)』から始まる麻薬戦争三部作です。
これからウィンズロウの世界に飛び込む読者のために、失敗しない必読ロードマップを整理しました。
ステップ1:壮大な大河ノワールに挑む「麻薬戦争三部作」(読む順番の王道)
文句なしの最高到達点であり、早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)などから刊行されているメインストリームです。アメリカ麻薬取締局(DEA)捜査官アート・ケラーと、メキシコの麻薬カルテルを率いるアダン・バレーラ。宿敵となった2人の30年以上に及ぶ血みどろの闘争を描きます。
- 第1作:『犬の力』(上・下巻)……1970年代から始まる抗争の幕開け。麻薬ビジネスの残酷な誕生劇。
- 第2作:『ザ・カルテル』(上・下巻)……2000年代の凄惨を極める抗争。国家と組織犯罪の癒着を容赦なく告発。
- 第3作:『ザ・ボーダー』(上・下巻)……アメリカ本土へ浸透するヘロイン禍と、巨悪との最後の対峙。
この三部作は、刊行順=時系列となっているため、必ず『犬の力』から順番に読み進めてください。登場人物たちの運命が途切れることなく連鎖するため、順番を飛ばすと心理的衝撃が半減してしまいます。
ステップ2:スタイリッシュな疾走感を味わう単発・独立作品
「上下巻の大作はいきなり重い」という方には、カリフォルニアのサーフカルチャーと犯罪を掛け合わせた傑作がおすすめです。なかでも『野蛮なやつら(Savages)』は、短文を連ねたラップのような文体と前代未聞のテンポで読者を圧倒します。映画監督オリバー・ストーンが惚れ込み、自らメガホンを取って映画化したことでも知られる必読作です。また、引退した元凄腕マフィアの死闘を描いた『フランキー・マシーンの冬』も、ハードボイルド小説の最高峰として名高い一冊です。
ステップ3:作家人生を締めくくる集大成「ダニー・ライアン三部作」
ウィンズロウが作家引退を賭けて世に問うた『業火の市(City on Fire)』から始まるシリーズです。1980年代のロードアイランド州プロビデンスを舞台に、アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアの抗争を描き出した叙事詩。ホメロスの古代叙事詩『イーリアス』の構造を現代のギャング抗争に落とし込んだ圧巻の筆致は、長年のファンを唸らせました。