触知手順を正しく行っても拍動が触れない、あるいは極めて弱い場合には、大きく分けて「解剖学的要因」「局所的要因」「循環器系疾患」の3つの理由が考えられます。
① 解剖学的破格(先天的な走行異常)
健常人であっても、約8〜12%の割合で足背動脈が先天的に欠損・極細化している、あるいは外側へ大きく迂回しているといった解剖学的変異が存在します。足が温かく血色が良好であるにもかかわらず触れない場合、生まれつきの走行パターンの違いであるケースも珍しくありません。
② 高度の浮腫(むくみ)や皮膚の硬化
心不全、腎不全、低栄養などによる重度の下肢浮腫がある場合、皮下組織の水分層が厚くなり、深部の拍動が指先まで伝わりにくくなります。この場合は、指で数秒間しっかりと圧迫して浮腫を逃してから触知を試みるか、後述するドプラ血流計を用います。
③ 循環血液量の減少・ショックバイタル
脱水、出血性ショック、敗血症、極度の低体温状態では、生体防御反応として末梢血管が収縮し、四肢末梢への血流が優先的に遮断されるため、拍動が急激に減弱・消失します。