インターネット上の検索補助ワードや掲示板において、「板金屋 きつい」「板金屋 辞めたい」といったネガティブな検索行動が絶えません。現場の職人たちに取材を試みると、過酷な労働環境と賃金構造の歪みが浮かび上がってきます。
過酷な身体的負荷と労働環境のリアル
自動車板金塗装の現場では、サンダーで鉄板を削る際に生じる金属粉塵、パテ研磨時の微粒子、有機溶剤を含む塗料の吸入リスクが常に付きまといます。局所排気装置や防毒マスクの着用が義務付けられているとはいえ、夏季の塗装ブース内は熱気とスーツの密閉性により室温40℃を超えるサウナ状態に達します。
一方、建築板金の過酷さは「高所と天候」に直結します。屋根上での作業は墜落・転落事故のリスクを孕み、炎天下の夏場には遮熱性のないガルバリウム鋼板が70℃近くまで熱せられ、靴底越しに熱が伝わります。腰を屈めた中腰姿勢が長時間続くため、腰痛や関節痛を職業病として抱える職人が後を絶ちません。
給与水準と独立開業による収入格差
厚生労働省の統計調査を基に試算すると、板金工(自動車・建築双方を含む)の平均年収は約380万円〜480万円(平均年齢40代前半)で推移しています。見習い期間(20代前半)の月収は手取りで18万〜22万円程度にとどまるケースが多く、肉体的負荷に対して初任給が見合わないと感じて離職する若手が多いのが実情です。
ただし、技術を極めた先のキャリアパスには明確な跳躍点が存在します。卓越した調色技術や複雑な役物加工をこなすベテラン職人は月給40万〜50万円(年収600万円前後)に達し、さらに板金屋として独立開業を果たした親方層では年収800万〜1,200万円超を稼ぎ出す事例も珍しくありません。自前の作業場とリフト、あるいは加工ベンダー(折り曲げ機)を揃える初期投資の壁はあるものの、元請け直の案件を安定確保できれば高利益率を享受できる職種でもあります。