剪定を行ったにもかかわらず「翌年まったく実がつかない」というトラブルに直面した際、多くの栽培者がネット上の断片的な情報に惑わされ、不要な農薬や肥料を過剰投入して事態を悪化させています。実がつかない主因は、土壌や病気ではなく「剪定によって自ら花芽を切り落としている」という人為的ミスが圧倒的多数を占めます。
みかんの花芽は、前年の春から初夏にかけて伸びた枝(春梢)の先端付近に、夏から秋(8〜11月頃)の低温乾燥刺激によって作られます。この生理プロセスを理解せずに、冬から春先に枝の先端を一律にチョキチョキと刈り込んでしまうと、結実するはずだった花芽をすべてゴミ箱へ捨てていることと同義になります。結果として春には葉芽ばかりが吹き出し、青々とした葉だけが茂る「木ボケ」と呼ばれる状態に陥るわけです。
さらに深刻なのがみかんの木が枯れる原因です。愛好家の失敗談を検証すると、太い枝をノコギリで切った後に癒合剤(ゆごうざい)を塗布せず放置したことによる「木質腐朽菌」の侵入や、ハサミを介した感染症が際立ちます。特に、かいよう病や温州萎縮病などの病原体は刃物を経由して容易に伝播します。剪定作業前および樹木間を移動する際には、柑橘類の剪定ハサミ消毒(消毒用エタノールまたは次亜塩素酸ナトリウム水溶液への浸漬)を徹底することが、愛樹を枯死から守る絶対防壁となります。