無一郎の死を巡り、読者に最も凄惨なショックを与えた要因は、少年漫画の枠を超えた過酷な胴体切断という描写にありました。なぜ原作者・吾峠呼世晴氏は、最年少の柱に対してここまで非情とも言える結末を描いたのでしょうか。
その背景には、相手である上弦の壱・黒死牟が抱える圧倒的な異次元の強さと、無一郎との血縁関係が深く絡み合っています。黒死牟は戦国時代の始まりの呼吸の剣士・継国巌勝(つぎくに・みちかつ)であり、無一郎は彼が鬼となる前に遺した子どもの末裔にあたります。黒死牟から「我が血族」と見定められた無一郎は、鬼となるよう勧誘を受ける屈辱を味わいました。
左腕を切り落とされ、自らの刀で柱に縫い止められるという絶体絶命の窮地にあっても、少年の闘志は一切潰えませんでした。自力で刀を抜き去った無一郎は、悲鳴嶼と実弥が猛攻を仕掛ける一瞬の隙を突き、自らの命を囮にして懐へ飛び込みます。
その代償として右足を断ち切られ、さらに黒死牟の体内から無数に噴出した刃の暴風によって腰から下を両断されるという壊滅的な損壊を受けました。しかし、無一郎は胴体を両断されながらも決して日輪刀から手を離しませんでした。全体重と命の残火を注ぎ込んで刀を強く握り込み、刃を赤く染める「赫刀」を覚醒させたのです。この赫刀による内臓の灼熱化が、驚異的な再生力を誇る黒死牟の肉体を硬直させ、悲鳴嶼と実弥による首切断を可能にする決定打となりました。