長年、お茶と薬の禁忌として語り継がれてきた代表格が「タンニンと貧血の薬(鉄剤)」の関係だ。タンニンが鉄と結合して水に溶けない物質をつくり、体内への吸収を激減させるという説。昭和から平成にかけて、全国の保健室や調剤薬局で繰り返されてきた定番のアドバイスである。
ところが近年の研究では、一般的な濃度の緑茶や番茶をコップ1杯飲んだ程度では、鉄剤の造血効果に目立った臨床的悪影響は出ないことが判明している。胃酸の分泌や小腸の吸収メカニズムは、お茶に含まれる程度の渋み成分に屈するほど脆弱ではない。現在の大半の添付文書からも、かつてのような過剰な警告表現は姿を消した。
だが、一つの神話が解体された一方で、医療現場の関心はもっと目に見えにくく、はるかに深刻な別の化学反応へと移行している。