とはいえ、暮らしの根底には依然として「都県境の壁」が立ちはだかる。象徴的なのが警察と消防の管轄問題だ。
駅周辺の繁華街では、警視庁(東京都)のパトカーと神奈川県警のパトカーがすれ違う光景が日常茶飯事である。かつては境川沿いで事件や事故が起きるたび、「管轄争い」が生じるのではないかと揶揄された。近年では自治体間の協定が進み、災害時や重大事故における相互出動体制が整ってきたものの、現場レベルの微妙な温度差が完全に消えたわけではない。都立病院の恩恵や東京都が主導する先進的な医療DXの恩恵をフルに享受しつつ、いざという時の避難所やハザードマップは神奈川側の地形と直結している。この二重構造の中で、住民たちは極めて現実的な「使い分け」を身につけてきた。