ゴング直後、天心が放った左ストレートがメイウェザーの顔面をかすめた瞬間、さいたまスーパーアリーナは沸き立った。しかし、怪物のスイッチを入れたのはまさにその一撃だった。メイウェザーの表情から笑みが消え、前進を始めた途端、階級の壁という絶対的な物理法則がリングを支配する。
前日計量で突きつけられた4キロ以上の体重差。天心の鋭利な打撃は、メイウェザーの分厚い筋肉とディフェンス技術の前にはじき返された。逆に、無造作に振り下ろされるメイウェザーの右フックは、まるで鈍器だった。かすっただけで天心の身体が宙に浮き、足元がもつれる。3度のダウン。試合時間はわずか139秒。それはスポーツという枠組みを超えた、資本力と体格差がもたらす冷徹な処刑劇に近かった。