周囲を見渡せば、銀座の景色は一変した。古い雑居ビルは次々と解体され、ガラス張りの複合商業施設や外資系ラグジュアリーホテルが空を覆い尽くしている。容積率の緩和と都市再生の号令のもと、銀座8丁目界隈の再開発計画も水面下で激しい議論を呼んできた。
このビルも無風ではいられない。老朽化対策、耐震基準、巨額の立ち退き料の提示。デベロッパーの影は常にちらついている。それでもビルのオーナーや長年テナントを構える店主たちは、容易に首を縦に振らない。一度壊してしまえば二度と再生できないタイルの質感、階段の手すりのカーブ、そして何十年もの酒と煙草が染み付いた壁の艶。スクラップ&ビルドへの抵抗は、この街の魂を守るための闘争でもある。