ここ数年、世界のアートマーケットでは戦後日本の「具体美術協会(Gutaï)」や「もの派」に続く潮流として、前衛陶芸「走泥社」周辺の再評価が凄まじい勢いで進んでいる。その頂点に位置付けられ、価格が高騰しているのが彼の手による作品群だ。
2026年に入り、欧米の主要オークションでは初期の彫刻作品や代表的な酒器が、予想落札価格の数倍で競り落とされる事例が日常茶飯事となった。買値をつけているのは伝統的な骨董愛好家ではない。コンセプチュアル・アートやストリートカルチャーを通過した、次世代のグローバルコレクターたちだ。
彼らが熱狂するのは、小ぎれいにパッケージ化されたオリエンタリズムではない。どこまでも生々しく、荒々しく、人間の剥き出しのパッションが泥に刻み込まれているという事実。投機的な思惑を軽々と飛び越え、空間を圧倒するプリミティブな存在感に、莫大なマネーが引き寄せられている。