Pho Thinの物語は1979年、ベトナム・ハノイのロードゥック(Lo Duc)通り13番地から始まった。創業者ブイ・テ・ティン(Bui The Thin)氏が生み出した「フォー・ボー・タイ・ラン(牛肉の薄切り炒めフォー)」は、従来の澄んだあっさりスープとは一線を画す。高温の油でニンニクとともに激しく炒めた牛肉をスープに合わせる手法は、当時のハノイに強烈な衝撃を与えた。
この奇跡の一杯に惚れ込み、現地で直接交渉を重ねて日本への出店を勝ち取った創業メンバーの執念が、現在の成功の土台にある。レシピの完全門外不出を貫いていたティン氏を動かしたのは、単なるビジネスの提案ではなく「ハノイの熱気と文化そのものを東京へ届ける」という真摯な情熱だった。