隠しコマンドの拡散に伴い、SNS上では時折「特定の文字列を打ち込むとPCがフリーズして初期化される」「Googleの裏コマンドから個人情報がダークウェブへ抜かれる」といったセンセーショナルな言説が散見されます。しかし、ITセキュリティの観点から検証すれば、こうした言説は技術的根拠が皆無のデマ(都市伝説)に過ぎません。
Googleが自社サーバーおよびクライアントサイドで公式に配信しているイースターエッグは、すべて厳格なコードレビューとサンドボックス環境の制約下で動作しています。悪意あるスクリプトがローカルファイルを勝手に書き換えたり、認証情報を外部に送信したりすることはブラウザの基本構造上不可能です。こうしたデマが拡散される背景には、画面が急激に回転したり激しく揺れたりする挙動を、PCの誤動作やマルウェア感染と誤認したライト層の恐怖心が存在しています。
一方で、Googleの「悪ふざけ」が現実社会で笑えないトラブルを招き、深刻な炎上騒動へと発展した歴史的ニュースも厳然として存在します。その代表例が、2016年のエイプリルフールにGmailへ突如実装された「Mic Drop(マイクドロップ)」機能です。
この機能は、返信ボタンの隣に設置された専用ボタンを押すと、映画『ミニオンズ』のキャラクターがマイクを投げ捨てるアニメーションGIFが相手に送信され、以降そのスレッドからの返信を強制的にミュート(拒絶)するというものでした。「これ以上議論する気はない」というネットスラングをユーモラスに再現した意図でしたが、通常の送信ボタンのすぐ隣に配置されていたため、多くのビジネスユーザーが誤クリックして重要顧客や就職活動の応募先へ送ってしまう大事故が世界中で多発。「重要な商談を打ち切られた」「解雇された」という悲鳴がフォーラムに殺到し、Googleはわずか数時間で機能を取り下げ、公式謝罪に追い込まれました。
ネットの反応を見ても、掲示板やSNSでは「学校のパソコン室で一回転を入力して先生に怒られた」「上司のPCで斜めを検索して放置するドッキリを仕掛けたら大騒ぎになった」といった微笑ましいエピソードがある反面、「大事なプレゼン中に画面共有しながらうっかり入力して冷や汗をかいた」というヒヤリハットの報告も少なくありません。無害なプログラムであっても、行使する時と場所を誤れば現実のトラブルに直結するという事実は留意しておく必要があります。