炭治郎の鬼化劇は、原作コミックス第23巻・第201話「鬼の王」から第203話「数多の呼び手」までの全3話という極めて濃密な尺で描かれました。
太陽の光すら効かない無敵の怪物を前に、満身創痍の鬼殺隊にはもはや炭治郎を滅ぼす手段が残されていませんでした。冨岡義勇は「炭治郎のまま死なせてやりたかった」と涙を流し、嘴平伊之助は刃を首元に当てながらも「斬れねえ」と号泣して刀を振り下ろすことができませんでした。
絶望的な戦況を覆したのは、栗花落カナヲの捨て身の行動でした。
カナヲは、胡蝶しのぶから託されていた予備の「鬼を人間に戻す薬」を隠し持っていました。これは珠世が禰豆子のために開発した薬の残余であり、しのぶが万が一の事態を想定してカナヲに預けていた最後の切り札です。カナヲは残された右目の視力を代償にする奥義「花の呼吸 終ノ型・彼岸朱眼(ひがんしゅがん)」を発動。炭治郎が放つ無数の触手による猛攻を掻い潜り、その胸元へと薬を直接注入しました。
投与された薬は炭治郎の体内で急速に作用し、無惨の細胞を破壊し始めます。精神世界において、無惨は「お前は選ばれた存在だ」「外へ戻れば家族の死という現実が待っている」と炭治郎を甘言で縛り付けようとしました。しかし、下から押し寄せる無数の亡き家族の手、そして上から炭治郎の手を力強く引き上げる禰豆子や生き残った仲間たちの手によって、無惨の拘束は打ち破られます。
第203話のラストで炭治郎は人間の姿で目を覚まし、仲間たちと抱き合って涙を流しました。鬼化の持続時間はわずか数十分程度であったものの、その間に炭治郎は誰の命も奪うことなく、奇跡の生還を果たしたのです。