かつて容易とされた試験が、なぜここまで難化したのか。労働安全衛生の現場を取材すると、決定的な2つの理由が浮き彫りになります。
第1の理由は、労働安全衛生法令および化学物質規制の抜本的改正です。近年、職場の化学物質管理は従来の「法令による個別規制」から、企業が危険性を評価して自ら対策を決める「自律的な管理」へと大転換を遂げました。これに伴い、第一種衛生管理者が担当する有害業務関連の知識は、従来の単純な暗記から、リスクアセスメントの手順やラベル表示(SDS)、健康診断の実施基準など、より高度で実践的な理解を問う出題へとシフトしています。
第2の理由は、安全衛生技術試験協会による「公表問題の焼き直し問題」の削減です。協会は毎年4月と10月に「公表問題」として過去の出題内容を公開していますが、近年はこの公表問題と一言一句同じ選択肢は影を潜めました。過去問の正解肢を「誤りの選択肢」に作り変える、複数の法令規定を組み合わせた複合問題にする、あるいは数値基準の条件を微小に変更するなど、知識の表面だけをなぞった受検者をふるい落とすトラップが巧妙に張り巡らされています。