取材班が大手進学予備校の生物科講師や、出生前診断・遺伝子診療を扱うクリニックの遺伝カウンセラーにヒアリングを行ったところ、一般層のみならず高学歴層であっても陥りがちな「共通の認識エラー」が次々と証言されました。
「保護者面談や受講生の質問で最も多いのが、『DNA検査と染色体検査は何が違うのか』という混同です。DNA検査で特定の塩基の変異(遺伝子変異)を調べているのか、それとも染色体の数や構造の異常(トリソミーや転座)を調べているのかの区別がつかないまま、高額な検査を申し込んでトラブルになるケースが後を絶ちません」(都内大手予備校の生物科主任講師)
実際に、出生前診断などを手掛けるヒロクリニックなどの臨床現場でも、検査前のカウンセリングにおいて「染色体とは何か」「DNAと何が違うのか」を丁寧に解説することが最重要プロセスの一つに位置付けられています。
混同を招くもう一つの壁が、ヒトの染色体数と構造に関する正確な知識の欠落です。ヒトの体細胞には、父親から23本、母親から23本を受け継いだ合計46本(23対)の染色体が存在します。そのうち第1番から第22番までの44本は男女共通の常染色体であり、残りの2本が性別を決定づける性染色体(女性はXX、男性はXY)です。
SNSやネット上の知恵袋等では「ダウン症はDNAの異常か?染色体の異常か?」という問いが頻繁に交わされていますが、正解は「第21番染色体が通常より1本多くなり、計3本になる染色体異常(トリソミー)」です。DNAの文字そのものに誤植があるというよりは、「本が1冊余分に配架されてしまった構造の異常」と捉えるのが正確な理解です。