牡蠣のポテンシャルを極限まで引き出すための第一歩は、下処理にあります。水道水でそのままジャブジャブと洗ってしまうと、浸透圧の差によって牡蠣が水っぽくなり、旨味が逃げてしまいます。ここで不可欠となるのが、片栗粉を用いた吸着洗浄です。
ボウルに牡蠣を入れ、適量の塩と片栗粉をもみ込むと、片栗粉の微細な粒子がヒダの奥に入り込んだ汚れや雑菌、余分な粘液を強力に絡め取ります。汚れを吸って灰色に濁った片栗粉を冷たい薄い塩水(濃度約3%)の中で手早く振り洗いし、ペーパータオルで一粒ずつ丁寧に水気を拭き取ることで、臭みが完全に消え去り、磯の澄んだ香りだけが残ります。
さらに重要なのが、白ワインを用いた下味の工程です。フライパンに少量のオリーブオイルを熱し、水気を切った牡蠣を並べたら、白ワインを回し入れて蓋をし、弱中火で約1分半から2分間蒸し焼きにします。白ワインに含まれる有機酸が魚介特有の生臭さをマスキングし、アルコールが揮発する気化熱とともに不快な臭気を外部へと逃がします。表面のタンパク質が軽く凝固した絶妙な半生状態で火を止め、身を一度バットへ取り出しておくことが、オーブンで焼いた後もプリプリの弾力を保つための決定的なコツです。