大規模なコンサートツアーにおいて、チケット販売は通常、ファンクラブ先行、オフィシャル先行、プレイガイド一般発売という順序で段階的に進められます。この初期販売の段階では、会場全体のドーム・アリーナの座席表に対して安全マージンが多めに設定されています。
ツアーごとに異なるステージ美術のセット、大型LEDスクリーン、可動式フライングトラス、そして巨大なスピーカータワーなどの音響照明機材の配置は、事前の3D図面シミュレーションだけで100%確定できるものではありません。現場に実際のトラス(鉄骨の梁)を組み、ツアースピーカーを吊り上げ、アリーナ中央やスタンドに設置するフロント・オブ・ハウス(FOH:メインPA卓や照明オペレーションブース)を組んで初めて、ミリ単位の視界デッドスペースや観客の避難動線が確定します。
舞台監督や制作プロデューサー、警備統括が現地で最終実地検証を行い、「当初は機材置き場やカメラケーブルの取り回しエリアとして仮押さえしていたが、客席として安全に開放できる」と太鼓判を押したスペースが、晴れて機材開放席としてシステムに登録されます。つまり、主催者が意図的にチケットを小出しにしているわけではなく、物理的な安全確認と演出機材のレイアウト完了に伴って生じる必然的な副産物です。
デジタル音響制御や空間プロジェクション技術が長足の進歩を遂げた2026年最新チケット事情においても、フィジカルな機材の専有面積や高圧電源ケーブルの保安距離を完全になくすことは不可能です。結果として、公演数日前から前日にかけて行われる現場の最終リハーサル段階でしか、この席を市場に流通させることができない構造が続いています。